大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)3228号 判決

記録を精査するに、原判決の認定にかかる被告人の掲示した文書中には、「連合国」という文言を明記していないことは、所論のとおりであるが、しかし、該文書の記載全体を読めば、そのうちの「ファツシズム乃至敵陣営」なる文言によつて表示されているものに、連合国中我が国占領軍の主力を占めている米国が含まれていると解し得ることは、原判決の説明しているとおりであつて、この点をも含めて原判決の判示事実は、すべて、その挙示する証拠によつて、これを肯認することができるのであるから、原判決には、所論のような、採証の法則に違反し、又は証拠によらずして、事実を認定した違法があるものということはできない。論旨は理由がない。

控訴趣意第四点について。

原判決書の記載によれば、原判決が、その認定事実の前段において「(前略)同年六月二十六日附内閣総理大臣宛の連合国最高司令官の書簡に基く同党機関紙「アカハタ」発行停止処分に対し、これを言論の自由の圧迫として所謂人民大衆に訴える目的を以て(後略)」と判示していることは、所論のとおりであるが、しかし、右の記載によつて、直ちに、所論のように、被告人が誹謗攻撃しようとする対象が日本政府の処分だけであつて、前示書簡でも、米国でもないとは、いうことができないばかりでなく、かえつて、前示のような「連合国最高司令官の書簡に基く」なる文言よりすれば、被告人が単に、日本政府の処分ばかりでなく、その根源となつた前示書簡をも、攻撃しようとする目的であつたことを判示したものと解し得られるところであるから、原判決が、その認定事実の後段において、被告人の所為をもつて、「連合国に対する破壊的批評を論議し、以て占領軍の占領目的に有害な行為をなしたものである。」と判示したからといつて、原判決には、所論のような理由にくいちがいがあるものということはできない。論旨は理由がない。

控訴趣意第五点、第六点、第七点について。

各所論の要旨は、結局、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるとの趣旨に解されるので、案ずるに、原判決書によれば、原判決は、被告人の判示所為に対し、昭和二十一年六月十二日勅令第三百十一号第二条第三項、第四条第一項、千九百四十五年九月十日附連合国最高司令官「言論及び新聞の自由に関する覚書」三、罰金等臨時措置法第二条等を適用処断しているが、右昭和二十一年六月十二日勅令第三百十一号第二条第三項には、「この勅令において、占領目的に有害な行為というのは、聯合国最高司令官の日本帝国政府に対する指令の趣旨に反する行為、その指令を施行するために、聯合国占領軍の軍、軍団又は師団の各司令官の発する命令の趣旨に反する行為、及びその指令を履行するために、日本帝国政府の発する法令に違反する行為をいうのである。」と、同勅令第四条第一項には、「この勅令に違反した者及び占領目的に有害な行為をした者は、これを十年以下の懲役若しくは七万五千円以下の罰金又は拘留若しくは、科料に処する。」と、又前示千九百四十五年九月十日附聯合国最高司令官「言論及ビ新聞ノ自由ニ関スル覚書」三、には「公式ニ発表セラレザル聯合国軍隊ノ動静、聯合国ニ対スル虚偽又ハ破壊的批評及ビ風説ハ之ヲ論議スルコトヲ得ズ。」とそれぞれ規定されているのであつて、原判決の認定にかかる被告人の原判示所為は、右聯合国最高司令官の覚書三の趣旨に違反し前示勅令第三百十一号第二条第三項、第四条第一項に該当することは、明らかであるから、原判決が、これらの規定を適用したことは当然であるというべく、なお、所論にかかる、一、右勅令第三百十一号は憲法に違反しない。二、「論議」とは、必ずしも、口頭による場合のみを指称するものではなくて、文筆による場合をも包含するものであり、又、必ずしも、自己独創の見解を述べることのみに限定すべきでなく、他人の意見を請売する場合をも包含するものと解することが相当であるから、原判決が、被告人の原判示文書を掲示した所為を目して「論議」したものと認定したからといつて、これをもつて、所論のように、法令の解釈適用を誤つたものということはできない。これを要するに原判決には、所論のような判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあることは、これを認められないから、各所論は、いずれも、採用することができない。

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